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- HSPの特性
はじめに
HSP(Highly Sensitive Person)とは、1996年に米国の心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱された概念で、「非常に敏感な人」「繊細な人」と訳されます。これは性格の一部ではなく、生まれつきの神経処理特性であり、人口の約15〜20%が該当するとされています。HSPは病気ではなく、脳の情報処理の深さや感受性の高さを示す気質です。
この特性を理解するためには、まず自分がHSP傾向を持っているかどうかを知ることが重要です。そこで役立つのが、HSP診断チェックリストです。現在、複数の診断方法があり、それぞれに特徴があります。
アーロン博士のチェック診断

最も基本的な診断方法は、アーロン博士が開発した27項目の自己診断テストです。これは「はい/いいえ」で答える形式で、DOESモデル(深い処理・刺激過敏・共感力・微細感受性)に基づいて設問が構成されています。このテストは簡便で、初めてHSPを知る人にも適しています。
質問のうち、12個以上に「はい」と答えた人は、おそらくHSPでしょう。しかし、どんな心理テストよりも、実際の生活の中で感じていることのほうが確かです。たとえ、「はい」が1つか2つしかなくても、その度合いが極端に強ければあなたはHSPかもしれません。
「ひといちばい敏感な子」エレイン・N・アーロン著より
アーロン博士版チェック項目
1.自分を取り巻く環境の微妙な変化によく気づくほうだ。
2.他人の気分に左右される。
3.痛みにとても敏感である。
4.忙しい日が続くと、ベッドや暗い部屋など、プライバシーが得られ刺激から逃れられる場所に引きこもりたくなる。
5.カフェインに敏感に反応する。
6.明るい光や強いにおい、ざらざらとした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい。
7.豊かな想像力を持ち、空想にふけりやすい。
8.美術や音楽に深く心を動かされる。
9.とても誠実である。
10.すぐに驚いてしまう。
11.短時間にたくさんのことをしなければいけない場合、混乱してしまう。
12.人が何か不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるかすぐ気づく。
(例えば電灯の明るさを調整したり、席を変えたりするなど。)
13.一度にたくさんのことを頼まれるのは嫌だ。
14.ミスをしたり、忘れ物をしたりしないようにいつも心掛けている。
15.暴力的な映画やテレビ番組は観ないようにしている。
16.あまりにも沢山のことが自分の周りで起こっていると、不快になり神経が高ぶる。
17.生活に変化があると混乱する。
18.繊細な香りや味、音楽を好む。
19.普段の生活で、動揺を避けることに重きを置いている。
20.仕事をするとき、競争させられたり、観察させられたりすると、緊張していつもどおりの実力を発揮できなくなる。
21.子供の頃、親や教師は自分のことを「敏感」「内気」と思っていた。
保坂隆版(日本の精神科医)
日本人向けにアレンジされた診断方法として、精神科医・保坂隆氏によるチェックリストがあります。こちらは「はい/いいえ」で答える形式で、文化的背景や生活習慣に配慮された設問が特徴です。日本語で直感的に答えやすく、初めてHSPを意識する人にも適した診断方法です。
保坂隆医師版チェック
1.周囲の微妙な変化にすぐ気づき、空気を敏感に読む
2.相手がどういう気分なのか、気になってしかたがない
3.人にどう思われているか、とても気になる
4.人と話しているとき、つい言葉の裏を考えてしまう
5.人見知りで、初めて知り合った人となかなか慣れない
6.ひとりでいるのが苦手で、誰か頼れる人がいてほしい
7.体を触られるのが苦手
8.人前で仕事をするのは集中できないので苦手
9.おなかがすくと集中できなくなる
10.間違いを指摘されると傷つき、なかなか立ち直れない
11.約束をすると、とても気になって落ち着かない
12.カフェインに敏感で、お茶やコーヒーを飲むと眠れない
13.においや味などの好みが強く、苦手な食べ物も多い
14.忘れ物やミスがないか、何度もチェックするほうだ
15.他人に対して、とても良心的だと思う
16.ちょっとしたことにも、すごくびっくりする
17.大きな音がとても苦手
18.明るい光や交通音、時計の針の音が気になって眠れないことが多い
19.動揺してしまうような状況をなるべく避けている
20.想像力が豊かで、空想にふけることが多いと思う
21.美術や音楽が大好きで、人より感動するほうだ
22.勘がいいほうだ
23.痛みに敏感
24.暴力的、残酷なシーンのある映画やテレビは見ない
25.短い時間に多くのことを同時にするのは苦手
26.生活に変化があると混乱し、落ち着くまで時間がかかる
27.人前で話すのが苦手でプレゼンテーションなどで緊張する
28.肩こりや頭痛をよく感じる
29.ストレスで胃が痛くなることがある
30.子どものころに、親や教師から「内気」「神経質」といわれていた
イルセ・サン版(デンマークの心理療法士)
デンマークの心理療法士イルセ・サンによる診断は、より詳細な傾向分析が可能です。48項目の質問に対して、0〜4点の5段階評価で回答します。この診断は、DOESモデルの各要素を細かく可視化できるため、自己理解を深めたい人や心理学的分析を行いたい人に向いています。
イルセ・サン版チェック
各項目に以下の判定基準で点数をつけていく。
0点:全くあてはまらない
1点:ほとんど当てはまらない
2点:少し当てはまる
3点:ほとんど当てはまる
4点:完全に当てはまる
テスト
1 美しい音楽を聴くと、興奮する
2 日々、どんな失敗が起こりうるか予測して対応策を考えることに、多くの労力を費やしている。
3 新たな可能性や選択肢に気づくのが得意だ
4 すぐにインスピレーションを受けて、良いアイデアをたくさん思いつく
5 この世には耳で聞き、目で見るよりもたくさんのものがあると知っている
6 痛みを感じやすい
7 ほかの人にとっては些細に思えることにさえ、打ちのめされてしまうことがある
8 毎日、一人でいる時間が必要だ
9 一人になって休憩する時間がないまま他人とずっと2,3時間以上も一緒にいなくてはならないと、疲れ果ててしまうことがよくある。
10 緊迫した空気が流れていると、その場から離れたくなる。
11 誰かの怒りを感じると、たとえ自分に向けられていなくてもストレスになる
12 ほかの人の痛みが自分の神経の奥深くに入り込んでくる
13 不愉快な驚きや誤解を避けるために、いろいろと手を尽くす
14 創造力がある
15 時々、芸術作品を見ていて、喜びで胸がいっぱいになることがある
16 大量の情報や刺激にすぐに耐えられなくなってしまう(特に一度に複数のことをしているときには、ほかの人と比べて、わずかな刺激でも反応しやすくなってしまう。たとえば、ネットで情報を検索しているときに、話しかけられるのはストレスになる)
17 遊園地・ショッピングセンター・スポーツイベントといった非常に刺激の多いところに行くのが好きではない
18 テレビなどで暴力シーンを見ると、そのあと何日間も影響されてしまう。
19 ほかの人よりも考えることに時間を使う
20 動物や植物の状態を感知するのが得意
21 美しい自然を見ると、心の中が歓喜の声でいっぱいになる
22 常にアンテナを張っていて、周囲の人がどんな気持ちでいるか察知することができる
23 良心が痛んで後ろめたい気持ちになったり罪悪感を抱きやすい。
24 仕事中に誰かに監督されていると、ストレスを感じる
25 真実が何かを見抜くのがうまく、ほかの人の欺瞞にもすぐ気づく
26 すぐにびっくりしてしまう
27 強いつながりを持ち、深く交流できる
28 ほかの人たちが不快に思わないような音も、ひどく苛立たしく思えることがある
29 勘が良い
30 一人の時間を楽しめる
31 流れに任せて即座に行動することはめったになく、たいていの場合、よく考えてから動く
32 大きな音・強烈なにおい・鋭い光をひどく不快に思うことがある
33 時々、穏やかに落ち着いたところで休憩する必要がある
34 おなかがすいたり、寒いと感じたりしたとき、そのことがなかなか頭から離れない
35 涙もろい
36 事前準備なしに、新しい体験に飛び込むのが好きだ
37 相手の裏をかいて、自分の言い分を通せると、満足な気分になる
38 “社交の場で疲れることはない
(席を外して一人になって休憩をとることもなく、雰囲気が良ければ、朝から晩まで楽しめる)”
39 サバイバルなキャンプが好き
40 プレッシャーを感じながら働くのが好き
41 上手くいっていない人は、その人自身に責任がある場合が多いと思う。
42 自分の周りで何が起きていようと影響されることなく、エネルギッシュでいられる
43 パーティーでは、いつも自分は最後の方に帰る
44 心配しすぎるとことはめったになく、いつも冷静に対処できる
45 週末は友人たちとコテージで過ごすのが好きで、途中、わから抜けて一人になる時間は特に必要ない
46 友人や知り合いが突然やってくるサプライズ訪問が大好きだ
47 あまり寝なくても大丈夫だ
48 花火や爆竹が好きだ
算出方法
(1~35の総和)ー(36~48の総和)がこのテストの得点になる。
これが60点以上だとHSPの気質がある、と言われています。
その他(HITOSTATサイト)
作者不明ですが、質問に答えていくと自動で算出してもらえます。

診断後の活用
HSP診断は、単なるラベル付けではなく、自己理解とセルフケアのためのツールです。診断結果をもとに、以下のような工夫が可能になります。
・刺激の少ない環境づくり(静かな空間、自然とのふれあい)
・感情の境界を意識する(他人の感情に巻き込まれない)
・予定を詰めすぎず、休息を優先する
・自分の特性を活かせる仕事や人間関係を選ぶ
など
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